Infinity


act.03 街の宿

「何だってのよ!この魔物の数!」
 ティナが最後に魔物を焼き尽くしてからその場に尻餅をつく。
「ほんとに・・・。今まで1日でこんなに多くの数の魔物に襲われるなんてなかったのに・・・」
 キールが刀を戻す。その横でルゥも魔物の血を払って草にこすり付けて腰に戻す。
 最近は魔物に襲われっぱなしだった。理由は分からないが、今日に至っては群に襲われ、Bランクの魔物にも襲われた。
「そうか?俺はいつもこんな感じだった」
「・・・」
 二人は沈黙する。その言葉で原因を悟ったからだ。
「それじゃあ、あんたをここへ縛っておけば私達は街の宿でぬくぬくと寝てられるのね・・・」
 静かな殺気を感じて思わず身じろぐ。
「まあまあ。ルゥが原因と決まったわけじゃないし」
「決定でしょ!あきらかに。・・・まぁもうすぐ街に着くから今日の所は我慢してあげる」
「大人になったねーティナ」
 ルゥは保護者のように微笑むキールに尊敬の念を感じながら道中を急ぐ。


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「はーお腹いっぱい」
 満足げにつぶやいてフォークを置く横で全然食べていないルゥもフォークを置く。
「全然食べてないじゃないか」
「おれはお腹いっぱい食べれないんだ。いつ敵に襲われるか分からないのに食べてしまったらいざという時に動けないから。それでもう体がそれに合ってきているみたいだ」
 ルゥの言葉に二人はなんとも言えない気持ちになり、綺麗になった皿を見つめる。
「どれだけ危険な目にあってきてるのよ」
「さあ。危険だと感じたことがないから分からない。どうせ不老不死だ」
 ルゥは淡々と答える。
「まあ、ティナは食べ盛りなんだからいいんじゃない?」
 キールは苦笑しながら言ってやる。ティナはキッと睨みつけてから片付けに来てくれた店員に礼を言う。
「まあ、いいとしてもうお風呂入って寝ますか」
「そうだね。ルゥはおれと一緒の部屋で」
 頷くルゥを確認してからティナと別れる。

「ふぅ。ルゥはどっちのベッドがいい?」
「俺はいい。床で寝るから」
 ルゥは腰から2本の剣を鞘ごとはずす。
「えぇ!?床ってこの床?」
「ああ。横になって寝ることが出来ないんだ」
 と言って、ベッド横に腰を下ろす。壁に背を預けて剣をすぐ横に置いてそのまま瞼を閉じた。
 キールはその姿を呆然と眺めて小さくおやすみと言って灯りを消す。

 なんて子だろう・・・。
 じぶんよりも年下なのに経験の差といったら。たぶん何か理由があって魔物にも散々追われる夜を過ごしてきたんだろう。
 それなのにそれが当たり前と思って過ごしている・・・。
 不老不死の力を手に入れてまで辛い過去の因縁を断ち切ろうとしているなんて・・・。

 キールは暗闇の中で、聞こえないルゥの寝息を感じようとした。
 だが、寝息どころか人がいる気配すら感じられなかった。
 ハンターの中でも相当腕が立つ方なんだけどな・・・
 苦笑しながら眠りに着いた。
 きっと明日も何かに驚かされるんだろう―――得たいの知れないルゥに。

- continue -

 

10.03/06



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